松村– Author –
松村
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フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
21.落ち葉
冬枯れた明るい雑木林を歩いた。落ち葉を踏みしめる音とふかふかの土の感触が、記憶を呼び覚ます。群馬県ですごした小学生時代。通学で毎日歩く雑木の森は、四季を通じてぼくたちの遊び場だった。夏にカブトムシが集まる木があり、ぼくたち遊び仲間は、... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
22.初雪の朝
八ケ岳がうっすらと初雪でおおわれた朝、急に思いたって蓼科方面にまで足を伸ばしてみた。ふもとはまだ秋のままなのに、高度が上がるにつれて植生や風景はどんどん変化してゆく。ある標高を境に、季節は秋からすっかり冬の装いへと変わっていた。あと戻... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
23.こころの場所
ここにいると、なんとなく気持ちが落ち着く。だれでもそんな空間を一つや二つ、持っていないだろうか。それは庭のかたすみの花壇であったり、お気に入りの雑貨店かもしれない。ぼくはそれを「こころの場所」と呼んでいる。 どうやらぼくは根っからの自... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
24.神からの贈り物
明日はクリスマスイブ。大切な人と食事の約束をしたり、心をこめたプレゼントを用意している人も、たくさんいらっしゃることだろう。せっかくの機会なので、わたしからも一つ提案させていただきたい。お近くの教会のクリスマス礼拝に、ぜひ参加してみて... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
25.凛
ある冬の日の朝のこと、落葉してすっかり明るくなった清里のトレイルを、久しぶりに歩いた。特に意識を向けなくても、足は勝手に道をたどってゆく。何かを考えるのではなく、こころの赴くままに森を歩く時間が、ぼくはとても好きだ。ふいに空間を影が横... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
26.光と影の魔法
レンズには酷な条件だが、ぼくは写真に太陽を写し込むのが好きだ。雪の残る八ケ岳の県営牧場。紺碧の空の広がりの中を一筋の飛行機雲が、白竜のように西へと伸びてゆく。空間に余すところなく降り注ぐ光。その光と、空の青と、大地のシルエットという限... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
27.地球家族
春を目前にしたこの季節は、時に思いがけない雪が降ることがある。ちょうど三年前の今朝も、そんな雪の夜が明けた、美しい朝だった。 昨日まで単調な灰色だった冬枯れの林は、朝の光に包まれて息を飲むような別世界に変わっていた。木々の枝につもった... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
28.花が教えてくれたこと
かつて夏の北極圏アラスカのフィールドを、一人で歩いた時のことだった。撮影機材のほか、テントや食料が入って自分より重くなったザックのあまりの重さに疲れたぼくは、力尽きて荷物を投げ出し、草地に倒れこんだ。ちょうどその場所は、黄色い花が咲き... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
29.希望の物語
間もなく4月を迎えようとする今日。里にはすでに、春を告げる色とりどりの花が咲きはじめた。しかし、冬の様相を今なお色濃くとどめるこの山あいに春が訪れるのは、まだしばらく先のことだろう。冬と春のはざまをためらうように行きつ戻りつしながらゆっ... -
フォトエッセイ『自然・生命を見つめて』
30.永遠に
気がつけば、今までほとんどさくらを撮らなかったぼくが、なぜかこの数年で、たくさんのさくらを撮っていた。そればかりか、一昨年制作した写真展の30点の作品の中に実に4枚のさくらを、ぼくは選んでいるのだ。 写真展作品を選ぶ過程で、絶対に外して...